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そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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さて、問①です。ハンナが無期懲役刑を選んだのはどうしてなのか? と受講生たちに尋ねると「わからない」と言う人が多かったんですが、あなたにはわかるでしょうか?

ここは簡単です。ハンナは、文字の読み書きができないことを恥じていたからです。それは誰にも知られたくないもので、むろんミヒャエルにもです。

また、車掌から事務の仕事に栄転されるわかっているのに、すぐに辞めてしまったくらいですから。

そして、彼女は天涯孤独らしく見えます。原作にもハンナに家族がいたのかは全くかかれていません。ハンナの青春期は戦中と戦後で、社会全般が殺伐としており、そんな中では学ぶどころか職を得ることも容易ではなかったと考えられます。

まして、読み書きできないのでは職を選ぶことはできず、就けたとしても過酷な長時間労働で、しかも不安定な職だったのではないかと。生活に余裕は全く無く、生きていくだけで精一杯だった人なのかもしれません。

そんな予想が立ちます。ハンナはいつも不機嫌そうにしており、よくいらだっていましたから。疲れており、不安を抱えており、学ぶようなエネルギーも、時間もお金もなかっただろうと。

たぶん、職場を転々としていたと予想します。
このように舞台背景を知らないと、的外れなことを考えてしまう怖れがあります。

さて、羞恥心が強すぎる気質だと考えられるので、ハンナは「防御タイプ174」と判定できます。またの名を優等生気質といい、一番になりたがり向上心が強くて負けず嫌いです。

そのような気質であれば、文字の読み書きができないなど恥ずかしいというだけでなく、強い劣等感に襲われるもので、決して他の人に知られてはいけないものになるでしょう。また、自分に自信をつけることができず萎縮してしまい、疎外感が強く孤立感みたいなもので一杯だったろうと予想されます。

むろん、同じタイプでも個々人で羞恥心度は違うはずです。ハンナは度外れて強すぎると言えるくらいです。なにしろ選択できるのは、無期懲役と4年の刑期で、無期のほうを選んだ人なのですから。

さらに、罪を押し付ける4人の女性たちと対決しないままです。つまり、事実を明らかにしようとする気持ちよりも、羞恥心のほうが強かったのですから…。

でも、裁判ではそれ以外のことでは、ハンナは率直にありのままに、かつ自分に不利になるようなことにも正直に答えていました。
ところで、映画の感想をブログにまとめる人たちはよくいます。青字の文です。

ヒロインが、自分が罪を背負ってまで、なぜ文盲を隠したがるのかも理解できなかった。文盲なのは彼女の責任ではないし、努力すれば克服できるはずなのに。

「文盲」って、自分の人生をかけてまで隠さなければならないことなんだろうかってこと。時代が違うからか、土壌が違うからか? どうも、腑に落ちないところなんですけど・・・。

彼女は実はそれを恥じていたのでは無いのです。彼女が本当に恥じていたのは“沢山の人を殺めた”という事実だったのです。しかし彼女はその重圧に耐えられず現実を直視出来ないが故に、「読み書きが出来ない」という事を自分の最も恥じている事に「仕立て上げ」、自分が本当に恥じている事の上に置く事によって、本当の恥を隠そうとしたのです。

裁判って刑を軽くしてもらうためにはどんなウソでも付かないといけないのに、その逆をわざわざやるんだから、ハンナは相当なプライドの持ち主だなぁ、馬鹿だなあという感じになってしまった。

ハンナは裁判で記名せず、自分が犯罪のリーダーだと認めてしまう結果となったのは、重大な罪状を一身に背負わされる事よりも非識字者という事実を公けにするほうが愚かだという意識があったからなのだろうか?

タイプが違うのでわからなかったのだろうと思われる感想文もありますが、なにを言っているのかわからない文もあるように思います。そして、あなたに近いものはあったのでしょうか?

追加です。とても興味深いブログ記事があったので、転載しています。この方の感想文が一番面白く読めました。http://blog.goo.ne.jp/masakichi917/e/982e854203c4356ff1a195dd491fcc4d

日本の識字運動で功績のあった天理大学の故内山一雄教授の報告によると、非識字者のそれを隠そうとする心情は、一般人の想像を絶するものがあるといいます。絶えず自分自身みじめな思いで暮らさざるを得ず、役所へ行けば自分の住所、氏名を書けと言われるのではないかなと怯えて、「いや、手を怪我してますんで」と言い訳するために、始めから右手に包帯巻いていくとか、公の場へ出た途端にもう心臓がどきどきして、体が震え、識字学級で練習したときはちゃんと書けたのに、そこに行ったら途端に鉛筆が震えて書けなくなったということがあるそうです。

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