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そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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愛知県にある脱原発市民組織である「未来につなげる・東海ネット」と、Cラボ()市民放射能測定室)の共同で、
以下の「抗議声明と提言」をまとめており、公表しております。


名古屋YWCAで記者会見しており、これがNHKニュースに流れ、また、中日新聞の記事にもなりました。

なお、当ブログの3月頃に、原発事故などに対する情報をシェアしてくださった「大沼レポート」の大沼さんが中心になって記者会見をしている。


………………………………………………………………………


<厚生労働省による食品含有放射能新基準案に関する抗議声明と提言>

未来につなげる・東海ネット
市民放射能測定センター
(2012年1月17日)

食品に含まれる放射能に関する政府暫定基準は、放射性セシウムに関して飲料水と乳製品が200Bq/kg、それ以外のすべての食品について500Bq/kgという乱暴極まりないもの。

国民の生命をないがしろにするものであった。人倫にもとる最悪の基準といってもいい。

我々の試算では、基準ぎりぎりの食品と飲料水を毎日摂取すれば、放射性セシウムの食品摂取による内部被曝だけで、年間約7mSvになってしまう。

これに加えて、ほとんど測定されていなくて、なおかつ基準すらないストロンチウム90などの摂取や吸入による内部被曝があり、さらに、外部被曝が加算される。

一方、政府は従来の年間被曝線量限度1mSv/年を、一気に20倍の20mSv/年に引き上げました。

内部被曝を全く無視して、1時間あたりの空間線量3.8μSv/H以下なら、避難しなくて良いとする計算結果を、激甚汚染地域に押し付けてきました。

これでは、外部被曝だけで年間20mSvに達してしまう。これに内部被曝が加算されてくるのである。

こうした政府や自治体による生命と健康をないがしろにする政策によって、福島県を中心とする激甚汚染地域に暮らす200万人を超える人々は、過酷な被曝を強いられている。

とりわけ、放射線感受性が高く、前途に長い人生を持つ子供達の被曝は悲劇的であり、一刻も早く疎開や保養の対策をとらなければならない。

これらの基準の押し付けに対して、広範な市民による抗議の声とアクションが粘り強く展開され、昨年12月22日、ようやく食品含有放射性セシウムについての新基準案が厚生労働省の審議会で了承された。

放射性セシウムについて飲料水が10Bq/kg、それ以外の一般食品が100Bq/kg、乳児用食品と牛乳が50Bg/kgと、乱暴な暫定基準に比べれば改善されているが、まだまだ不十分です。

事故から10ヶ月もの間過酷な被曝を強いてきた政府と御用学者の態度が改められたとは、到底思えない。

正義と人倫にもおとる政府に抗議するとともに、以下具体的に新基準の問題点を指摘し、我々・市民側からの食品基準と測定体制に関する提案をする。


 
1. 新基準はICRP勧告さえも無視している


アメリカの核戦略の圧力を受けて、内部被曝を過小評価しているとされ、先ごろ放映されたTV番組(NHK:追跡!真相ファイル「低線量被ばく 揺らぐ国際基準」)でも、元委員がそのことを証言した国際放射線防護委員会ICRP勧告でさえ、一般市民の外部被曝と内部被曝の合計値としての年間被曝限度を1mSv/年としている。

日本政府も、これに従って国内法を定めてきたはずであった。ところが新基準案は、内部被曝だけに限定して、年間許容被ばく線量を1mSv/年としている。

外部被曝線量を加算すれば、激甚汚染地域では相当大きな被曝線量になってしまう。

さらに、摂取した放射能から内部被曝線量を計算する際に用いられる実効線量係数が、ICRP勧告では小さすぎる、との指摘がヨーロッパ放射線リスク委員会ECRRによってなされている。

ECRRは5倍大きな係数を勧告している。この係数を用いれば、年間被曝線量は5倍になる。

最低でも、ICRP勧告の外部被曝と内部被曝の合計値としての年間被曝限度を、1mSv/年として、食品の基準を決めるべきである。

その際に学ぶべきはベラルーシやウクライナの最新の基準(パンが40Bq/kg、ジャガイモが60Bq/kgなど、貧しい庶民が日常食べ
なければならない食品に厳しい基準が設定されている)である。

 
2. 新基準の検討にあたって、流通する食品の50%汚染を仮定

リスクの評価には常に不確実性が伴う。得られた数値に2~3桁もの不確実性があることがまれではない。

このために基準値などを定めてリスク管理する場合は出来るだけ安全サイドで決定がなされる必要がある。

基準値ぎりぎりの食品を毎日食べ続けるような事態は、現実にはないかもしれないが、その極端な場合でも健康被害が抑制できる水準で基準値が決定されるべきなのである。

まして、現況では測定体制が不備で、乱暴な暫定基準さえ潜り抜けて基準超過食品が流通している。

そのような状況下では、50%汚染を仮定した検討は不適当である。

さらに、放射線リスクには閾値がないことは、ICRPさえも認めている。

新基準案では基準設定にあたって、年間内部被曝線量1mSv/年を「許容被曝線量」と呼んでいるようであるが、「我慢被曝線量」であることを改めて確認しておく必要がある。

 
3. ストロンチウム90などほかの放射性核種を無視している


福島原発から放出された放射能は放射性セシウム(セシウム137+134)だけではない。

物理学的半減期が約29年とセシウム137(半減期30.2年)とほぼ同等です。

骨に沈着して排泄されにくい核種であるために生物学的半減期が18年もあるストロンチウム90や、毒性が高いα核種であって半減期が24100年もあるプルトニウム239などを無視している。

これらを食品として摂取したことによる被曝線量は、当然ながら足し算されるべきである。

これらを無視すれば、放射性セシウムだけで、年間内部被曝線量1mSvをいっぱいにしてしまうというのは無茶である。必ず基準超過が起きてしまう。

チェルノブイリ事故と違ってストロンチウム90の放出が少なかったなどという見解もあるが、根拠となるデータに乏しい。

まして、今も続いている汚染水に含まれて海洋汚染をしたストロンチウム90の挙動は未解明であり、魚などの水産物の汚染が最も危惧される。

ストロンチウム90は、ガンマ線を出さないベータ核種であるために、測定に時間がかかることは確かである。がしかし、そのことは言い訳にならない。

チェルノブイリ原発事故で汚染されたベラルーシやウクライナでは、ストロンチウム90の基準があり、測定もなされている。

大気圏内核実験やチェルノブイリ原発事故による汚染を調査するために、日本全国の自治体研究所でこれまでに膨大なストロンチウム90の測定データが蓄積されてきている。

それが国内で起きた原発事故に対して測定されないというのは到底理解しがたい事態である。

少なくともストロンチウム90の測定体制を早急に整え、汚染実態を把握するとともに、基準を設定するべきである。

 
4. 新基準の適用は4月以降、しかも、米、牛肉、大豆には猶予期間


こんなに待たせておいて、3月いっぱいは最悪の暫定基準が継続する。しかも、米と牛肉は少なくとも9月まで、大豆にいたっては年内いっぱい暫定基準がそのまま続けられる。

この新基準案の原案を作成した官僚たちは、国民の生命と健康を守ることよりも、基準超過して行き場を失う食品の処理方法の心配を優先させているとしか思えない。

年間被曝線量限度を20mSv/年にした時も、彼らは200万福島県民の避難・移動の手配をしたくなかったから、それをしなくてすむ基準を住民に押し付けたとしか思えなかったが、今回も同じ論理が感じられる。

なお、新基準が適用された後は、大量の基準超過食品の行方をきちんとモニタリングする必要があることも付け加えておく。

さらに、新基準が適用されれば、作付制限農地も大幅に拡大するはずであるが、このこともきちんと監視していく必要がある。

すなわち、これまでの作付制限基準である土壌5000Bq/kgは、土壌から作物への移行係数を1:10として、食品の基準500Bq/kgを根拠に決められていたからである。

同じ計算であれば、500Bq/kg以上の農地での作付が制限されることになるはずである。

 
5. 風評被害の原因をつくってきた暫定基準、全品検査体制の構築を急げ

500Bq/kgのような甘い基準では、基準を超過しなかったと保証されたとしても、到底食べる気にはならない。

まさにこのことが多くの風評被害を招いてきたのである。

国民がなんとか我慢して食べようというレベルの厳しい基準を設定し、その基準を超過する食品が決して出回らないように、全品検査体制を構築するべきです。

賞味期限に並べて放射能含有量を全品表示することが、風評被害を防ぐ最善の対策なのである。

最悪の原発事故を引き起こしてしまった我々は、ひとりひとりが正確な情報を得てリスクの自己管理をして生き抜いてゆくしかないのである。

  
6. 全品検査体制構築のために


我々は、やむなく高価な食品中放射能測定装置を購入し、市民放射能測定センターを開設した。

すでに同様の試みが全国数10か所で開始されている。ひとえに、政府の出鱈目な放射能対策と測定体制の不備が原因である。

せっかく持っている測定装置さえ、縦割り体制の中で生かされずに眠っているという報道もあった。

すでに述べたように、都道府県の研究機関ではストロンチウム90の測定能力があるにもかかわらず、生かされていない。

こうした情けない体制を早急に改め、全食品の測定体制を構築するべきである。

大手流通業者の中には、プライベートブランドの全品測定体制と、暫定基準の10分の1の自主基準を表明したところもある。

そういう動きを法的に支援し、助成していく必要もある。

ベラルーシやウクライナでは、国家予算のかなりの部分を割いて食品放射能測定体制を構築しているが、日本でそれが出来ないことはない。

例えば、全国に2万4千校ある小学校の全てに食品放射能測定装置を配備して、小学校区単位で住民が気軽に食品の測定が出来るようにすることも難しくはない。

ゼネコンが群がりつつある無駄な除染より先に、真っ先にやるべきことである。

そうすれば、少なくとも放射性セシウムについてだけは、国民ひとりひとりが放射能リスクの自己管理が出来るようになる。

そうなれば、政府や自治体の調査研究機関では、放射性セシウム以外の汚染核種についての測定体制を強化することが出来るであろう。

 
7. 放射能汚染食料を途上国援助に回すな


食品の基準が5分の1に引き下げられた時、基準超過食品が大量に発生することが予想されることは第4項ですでに述べた。

私たちは、これら基準超過食料の行方についても、政府として監視体制を準備しておくべきであることを、再度提言しておく。

汚染していない食料と混合して基準逃れをするような動きや、工業原料として転用された後にラベルが貼り替えられるというような、過去にあった不祥事を見逃してはならない。

私たちも市民放射能測定センターの測定能力の一部をその監視に充てたい。

外務省の第3次補正予算案には、途上国援助として50億円が計上されているが、その中身は工業製品と水産加工品とされ、「被災地で生産されている工業製品を開発途上国に供与。

また、被災地で加工された水産品を食糧援助として開発途上国に供与。

風評被害克服にも資する。」などと記載されている。

よもやここに基準超過食料が流し込まれるとは思いたくないが、これまでの政府の人権と健康をないがしろにしてきた一連の軌跡を見れば、あまり信用できない。

ここで改めて、放射能汚染食料を途上国援助に回すようなことを、決してやらないように警告しておく。

また、私たちもこの問題への注意と監視を怠らないことを表明しておきたい。

 
8. 我々の自主基準

摂取する放射能は限りなくゼロに近いほうが良いが、残念ながらそれは難しい。

当ネットワークの中でも、あくまでゼロを求める意見と、何らかの我慢値としての自主基準を政府基準に対抗して提案していこうという意見があり、議論は続いている。

後者から提案され、すでに市民放射能測定センター提案として公表した自主基準案は、以下のとおりである。

飲料水2Bq/kg、
幼児食品20Bg/kg、
それ以外の食品については厚生労働省が発表している食品群別平均摂取量リストに掲げられている食品群別に、
米30Bq/kg、
野菜30Bq/kg、
種実類50Bq/kgなどの基準を設定。
この基準についてICRPの実効線量係数を用いて年間被曝線量を計算すると、0.29mSv/年になった。

幼児は、0.070mSv/年であった。

天然の放射能であるカリウム40による被曝が0.2mSv/年、それ以外の天然由来の放射性核種からの被曝を合計すると、0.4mSv/年とされているので、この自主基準案は、それに対して約70%の超過被曝をすることになる。

これにストロンチウム90など測定されていない核種からの被曝を加算しても、なんとか100%超過で納めることが出来そうである。

同じ計算を政府の暫定基準で行うと、6.8 mSv/年であった。

問題外の過酷な被曝である。(なお、カリウム40やその他の天然由来核種による被曝もまた有害であり、生命の誕生以来あらゆる生物がこれに悩まされてきたことを付記しておく。)

厳しい基準を設定しても、それを測定して確認できなければ意味がない。

幸いにも、上記自主基準案のレベルであれば、一台あたり150~500万円のNaIシンチレーションスペクトロメーターで測定が可能である。

但し、飲料水の2Bq/kgを測定するためには濃縮が必要であるが、一般の台所でも可能な作業なので難しい問題ではない。

さらに今回、乳児についての追加提案をする。

乳児は母乳の場合を除けば粉ミルクと乳児食を主に摂取しているので、ゼロ基準の適用が容易である。

原材料を北海道や九州などほとんど汚染がなかった地域から調達することを義務付け、限りなくゼロに近い1Bq/kgを提案したい。

難しいのは母乳の場合である。妊婦および授乳中の母親について、特別の助言やケアが必要である。

乳児のゼロ基準に準ずれば、自主的に産地を選択し、非汚染地域の生産物を食べることを奨励・助言するとともに、汚染地域に
対する妊婦と授乳中の母親のためのゼロ食料の供給体制を構築する必要がある。

また、すでに述べた全品検査、全品表示体制の構築が急がれるべきである。

 
9.提案

政府は、今回の新基準案を見直し、国民が納得できる我慢値としての基準を再度設定するべきである。

少なくとも、ICRP勧告の外部被曝と内部被曝の合計値としての年間被曝限度を1mSv/年として、食品の基準を決めるべきである。

また、その基準を実効あるものにし、国民一人一人が食品含有放射能摂取リスクの自己管理が出来るようにするために、食品の全品検査体制を早急に整備し、放射能含有量の全品表示を早急に実現するべきである。

そのためには、全小学校区(とりあえずは汚染のひどい東北および関東、中部から)に食品放射能測定装置を配備し、測定オペレーターを養成するべきである。

さらに、流通業者に測定と表示の義務を法的に課すとともに、支援や助成を行うべきである。 以上

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