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この映画は、妊娠中絶が違法だった1987年のルーマニアを舞台に、ルームメートの違法中絶を手助けする女子大生の1日を描いています。
チャウシェスク(銃殺公開処刑されている)独裁政権の頃、労働力を確保する目的で4人子どもを産んでいない女性には、中絶が法律で禁止され、それでも中絶すれば重罪に処せられました。
政権末期になると避妊さえも禁じられてコンドームもピルも売られていなかったようです。同じ頃の日本と見比べてみたら、とても同時代には思えないでしょう。
さて、主人公の大学生二人は、当日中に処置をしなければという崖っぷちに立たされます。そこで手助けする女学生はある自己犠牲をします。そこが多くの観客にとって不可解で納得できないところだと考えられます。
しかし、この映画はエニアタイプ2の作品であると知ったならば、ホームページの理論等を読んでくださっている方々には理解できることではないでしょうか。
なお、この映画は低予算らしく、またワンシーンワンカットで手持ちカメラの長まわしをしています。それゆえ、よく観るものと違って違和感をもたれるかもしれませんが、このような撮り方のほうが臨場感は出るのではないかと思います。
監督クリスティアン・ムンジウさんは、「複雑な感情を描いているから、カメラを何度も止めると、俳優にも感情の流れが生まれにくい」と考えて、ワンシーンワンカットにしたみたいです。その意図は成功したと私には感じられます。
ところで、中絶を扱った映画は、これまで観たところでは優れたものばかりでした。イギリス映画「ヴェラ・ドレイク」は、下町に住む無学で善良な女性の身の上に起きた出来事です。
フランス映画「主婦マリーがしたこと」は衝撃的なものと言えます。フランス最後のギロチンで処刑されたある主婦の実話です。しかも、堕胎の手助けしたために処刑されたのですから、いかに国策として重大視していたか、わかろうというものです。この映画を観てしばらくは、ショックのあまり夢にまで出てきてうなされました。
中絶を少し取り上げているだけですが、「サイダーハウスルール」は、貧しい人々をよく描いている映画です。人知れず隠れて中絶をしなければならない米国の実態が出ています。明るく自由なアメリカというイメージがあったら、それは考え直したほうがよいのでは‥。
かつて日本も兵隊が要るので、“産めよ増やせよ”となった時代がありました。中国では一人っ子政策がとられており、いろいろな悲劇が起きています。現在の日本は少子化で、今度は“二人は産め”と言う。“腹は借りもの国家のもの”みたいな考え方が、今でも世界中で 大手を振って闊歩しています。
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