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そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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現在、一番尊敬している方は宮本常一さんです。

20年以上前に、『忘れられた日本人』を読んだきりですが、感動しながらも何故かその後が続かなかった…。

この夏に読んだ渡辺京二さんの著書『逝きし世の面影』から、明治から昭和初期頃までの庶民の暮らしを知りたいという気持ちが強くなりました。

宮本常一さんは、戦前から高度成長期まで日本各地を旅して、庶民の暮らしぶりをつぶさに見聞しています。

泊まった民家は1200件以上、旅の日数は4000日くらいとも言われています。日本の村という村、島という島を歩いたという伝説的な人物です。

しかも、行く先は離島や山間僻地ばかりで、報告されている文章からは貧しき人や差別されている人たちへの暖かい眼差しが見られます。

また、地球を4周できるくらい歩いており、得られた資料や撮った写真も膨大で、10万枚くらい残されているみたいです。民俗学の世界を一回り大きく広げたと言えるのではないかと思います。

★宮本常一情報サイト
http://www.h3.dion.ne.jp/~kamuro/miyamoto.htm
★宮本常一データベース
http://www.towatown.jp/database/

上記のサイトにもあるように、宮本常一さんを敬愛する人は日本の津々浦々におられるみたいで、各地で講演や勉強会などがよく催されているようです。

さて、でも私はやはりエニアグラム研究者ですから、彼の気質にも興味を持たざるを得ません。

常一さんは大変なおしゃべりだったことはよく知られています。彼の著書『庶民の発見』で、ご本人もそれを認めています。

「私は大変なおしゃべりである。しかし、庶民の過去についてはいくらしゃべっても、しゃべり足らない気がする」

まさに言っている通りで、講演などで話したことが本になっており、それらがあまりに多くて、どれから読み始めていいのか迷ってしまうほどあります。でも、当分、尊敬している人の本を読み続けられるのですから、幸福なことでもあります。

『アフリカとアジアを歩く』の中で、常一さんとともに旅をした伊藤幸司さんが述べているところが面白いのです 

「(先生は)話がはじまるとなかなか止まらないが、一生懸命に話しされるから、とても疲れる」

でも、「先生は疲れた! とは絶対に言わない。出された食事を残さないこと。聞き手がいる限り話をやめないことなどは、なにか信念のようなものに支えられているらしい」

これは67歳の頃のことです。大病を幾度も患い病気がちにも関わらず、疲れたとは決して言わず各地を旅している…。凄いことです。すぐに弱音を吐く私には考えられないことです。

また、各地でお話をして、学生などにも熱心にお話されていたようです。

そのエネルギーを考えるに、消えゆく庶民の暮らしぶりを、今のうちに聞き出して調べて資料も整えて、それらを後世に伝えなければならない、という信念に支えられていたのではないか、と思わざるを得ません。

自分の寿命を考えてか、若い人たちにそのことを伝えねばならない、という少し焦りのようなものがあったのではないかとも思うのです。

なお、、常一さんは1981年に73歳で逝去されています。       つづく

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