皇太子の家庭教師をした女性の着任の挨拶

当時、皇太子だった明仁天皇の家庭教師をしていたヴァイニング夫人の著書『皇太子の窓』を取り寄せて読み終えたところです。

なんと、昭和28年出版で定価580円です。少し茶色に変色しており丁寧に扱わないとほどけそうです。紙質が悪く早くも劣化しているみたいです。

豊田市になる前の市名で、「挙母市(ころもし)立図書館」が収蔵している本です。しかも、使われているのは旧漢字です。

新漢字と旧漢字の対照表
http://www2.japanriver.or.jp/search_kasen/search_help/refer_kanji.htm

中学生の頃、実家の本棚にあった本の多くは旧漢字が使われておりました。しかし、多くはふりがなが付いていましたから、子どもでも読めるようになっていました。

そのせいか、この旧漢字本、意外によく覚えていて読めたのには驚きました。子どもの頃に覚えたものは、頭ではなく体が覚えているって感じですね。

ヴァイニング夫人は昭和天皇のご意向で招かれた皇太子付きの家庭教師で、1945年から５年間教えておられた女性です。

なんとクエーカー教徒です。でも、宗教の指導はされなかったようで、文章からは高い見識のある優れた女性だと感じさせられるものでした。

★エリザベス・グレイ・ヴァイニング
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AA%E3%82%
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来日してすぐに学習院で語った挨拶を、こちらに転載しました(青字)。P59にあります。

すぐに、学習院の中等科に週一度教えるはずの皇太子殿下の組を参観した。…略…私は全校の生徒に紹介された。お辞儀をすればいいのだと言われたが、挨拶したいと願い出た。感謝の言葉を述べてから、次のように語った。

「私が日本へ参った第一の理由は、日本が新憲法で、国策遂行の具としての戦争を放棄したからです。

他の国々も日本の後からついてゆかねばなりません。

日本がその苦難と敗北との中から新しい力と夢を得て、平和への道において世界を指導し得るようになることを、私は信じて疑いません」

あなた方、若い人々こそ、それを成就する責任をもっているのです。

人間の誰もが自分の内部にある最もよきものを発達させ得る世界、自由な人々がすべての人間の利益のために共に働き得る世界を創造することが、あなた方の仕事です。

私は暖かい友情を胸に抱いて、また、あなた方の立派な先生方とご一緒に、あなた方を、いま申したような偉大な仕事をする人間に育てあげることに少しでも力をつくしたいと願って、ここへ参ったのです。」

あれから(来日して帰郷している)　わずか５年しか経たない現在、こうしてこれを書いている私の耳に、アメリカの指導者たちが日本に再武装させようとしているという噂が伝わってくる。

私たちアメリカ人は、私の生徒が成人するのを待たずに、こんなことを企てているのだ。


つまり、これを書いたのは１９５０年頃であり、戦後５年ほどで早くも米国の占領政策が変わったようです。

アメリカに押し付けられた憲法ですが、九条を変えるのもアメリカの押し付けでしかなかったのです。

こんなにも米国従属であれば、米国に利用されるだけのことで、日本国民の利益や国民の生命を守るものには決してならないだろう。

ヴァイニング夫人の言うように、平和憲法は私たちに新しい力と夢をもたらしたのではないかと思う。

たとえ押し付けられたものでも、絶対的に良いものは良い、と私は思うのですが、あなたはどう思われますか？