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よく知られているのが、インド北方にあるアッサム独立派ゲリラ組織との戦いにおける国王の類い稀な優れた手腕です。これまで見聞きしたことが無いものです。
このゲリラ組織はインドから独立しようというのですから、必然的にインド軍が制圧しようとします。圧倒的少数のゲリラ組織は追い込まれて越境し、ブータン南部の密林地帯に拠点を移しました。密林に入れば容易には侵入されず、ゲリラにとってはいい隠れ家です。
ゲリラ組織はおよそ2700人で31区画に分かれて立てこもっていましたが、国王はキャンプを全部訪ねたようです。王だけでなく随行者も、武器を持たず丸腰で訪ねて、解決策を話し合ったと言います。
しかも、幾度もゲリラキャンプを訪れており、その期間は6年余です。なんという粘り方をしているのかと思う。(私自身は諦めが速く、全く粘れない気質ですから)
この行動を見ると、ゲリラを厄介な存在だと見ているようには見えず、親しい隣人ゆえに誠実に熱心に説いて回るしかない、という感じがします。ゲリラたちも何か感じ取ったのではないかと思うのです。
それでも独立を求めるゲリラ側にとっては出来ない相談ですから、当然に拒否します。で、結局は膠着状態となります。そんな様子を見てか、苛立つインド政府はゲリラを擁護しているとブータンを批判します。2003年までにゲリラを一掃できないならば正規軍を派兵するぞと。掃討を開始するが、それでいいのかと脅します。
そんな事態に追い詰められた王は、武力行使をせざるを得なくなり、ブータン兵もいますが、義勇兵を求めました。王の求めに応じて数千人が志願しましたが、軍が疑問を投げかけたので、ブータン王国を守りたいという意志の固い人だけを採用したので、670人になったみたいです。
ゲリラとの戦いはなんと一日半で成功裏に終わりました。凄いところが、侵攻する前と後の国王の訓示です。戦いの前の演説を聞いて誰もが驚いたようです。まずは王の先に高僧が兵に諭すところです。
「あなた方は慈悲の心を持たねばならず、敵といえども他の人間と同じように扱わねばならない。あなた方は夫であり、子どもであり、親であり、兄弟であり、友だちである。ゲリラもあなた方と同じで、全員誰かと何らかの関係にあることは変わりない。仏教徒として殺生が認められるとは絶対に思ってはならない」
敵を殺すかもしれない戦いの前に、このような話を聞かされたら、戦う意欲がなくなってしまうかもしれない、そんな意外性のある訓示でビックリしますよね。次は王の訓示です。
「もし、一国が自衛できず、自らの安全を他の国に頼らざるをえないなら、その代償は大きい。国の安全を失えば我々は主権を失うことになる。それゆえに、ブータンには特別の役割がある。わが国の主権と安全を守るのは、軍の栄誉であり特権である。運命は我々にその機会を与えてくれた。いま進撃したならば、ゲリラ兵を一人残らず国外に駆逐するまで、ひるむことがあってはならない」
敵を人間だと思うな!とか、敵を殺すことをためらってはいけないとか、心を鬼にしろなどと言ってはいません。「国外に駆逐することだ」と目的を明確に示す訓示をしています。そして、戦闘が終わった時、王は全員を集めてねぎらいの言葉を与えます。
「紛争が終わったからと言って、何ら喜ぶ理由はない。軍事的基準からして勝利は速やかで、戦果は優れたものであった。しかし、戦闘行為において誉れとできるものは何一つない。一国が紛争状態にあることは決して好ましいことではない。いつの時代にあってもそうであるが、国家にとって最善なのは、紛争を平和裏に解決することである」
「ブータンはいかなる状況においても、軍の戦力に頼ることがあってはならない。ブータンは世界の二大大国にはさまれた地理的状況からして、軍事力でもって主権を守ろうというような考えは決して許されない」 (熊谷誠慈編著『ブータン』より転載、創元社)
ブータンの四代国王の行動のとり方や言葉から、あなたはどんな印象を受けたのでしょうか? テレビ画面を通じてアベやアソウの態度や言葉使いを知ると、どうにも比較にできないほどの大差がある、と、私はつくづく思う。(つづく)
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