そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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『宮沢賢治の肖像』(青字)には、エピソードが満載で、ここに取り上げられないくらいです。で、少し転載させてもらいました。

①宮沢さんとソバを食べての帰り道で、八百屋でリンゴ5つ買い、私にも食べなさいとよこす。私は「少なくとも教員者のハシクレである物がリンゴを食べながら町は歩けません」と答える。宮沢さんは「われわれという者は、タカが知れたものですよ。われわれがどの程度の人間か、町の人はちゃんと解っているから、大したことではありません」というのでした。花巻の目ぬきの大通りで、私も仕方なくリンゴをかじりましたが、じろじろ見られるのがとても辛くて、リンゴが胸につかえて…p57

リンゴをかじりながら町を歩くなど、今なら話題にもならないが当時は違ったようです。なお、「リンゴが胸につかえた」という人物もタイプ2w1らしい。同じ時代に生まれた同じタイプで、同じ地域に住み同い年であっても、羞恥心の強さは違っています。

②著書の森さんが語っているものです。「宮沢さんとは宗教的に同行できなくて…、おそろしくて深くつき合うこともできないような気持ちになりましたが、女房なんかを世話してくれて、私を世間並の人にしてくれた」…p57

③宮沢さんには、どんな暴力団にも負けないという威力がありました。賢治は花巻でも名を知られた者が、豊沢橋の上でケンカしているのを仲裁したことがあった。p60

④本なしで授業をはじめます。ぶったまげたものです。「本を忘れてきたが、昨日はどこまでだった」と、生徒に尋ねるのです。教科書をみないで昨日の続きからはじめます。どういうアタマだったのですかね。p68

同僚が語る→宮沢さんは春画の名作をしょっちゅう持ってきました。それをみんなで鑑賞した。p82

⑥宮沢さんはダルマぐつで生徒が掃除した廊下を歩いたり、窓を超えて職員室に入ったりすると、校長から「君、それはいけないじゃないか」と止める。私も真似して出たり入ったり。p85

それにしても賢治の羞恥心の無さは凄いです。間違いなく羞恥心度が少ないタイプ(825)と絞れます。数々のエピソードを知ると自信家ゆえのような気がします。

ちなみに、タイプ4の友人と二人で旅したことがあります。町の中心地でしたが、夕方なのに車も人通りもなくて、私は横断歩道ではないところや車道などを斜めに渡って、早く目的地に着こうとしていました。

すると、「ここは通ってはいけないところだよ」と、静かに諭すように告げられてしまいました。「えっ、こんな場合でも交通ルールを守れっていうの?」と、心の中で思いつつも反論はしませんでした。真面目度が最も強いタイプ(714)と絞れますが、羞恥心度も強い人たちですから。

これまで宮沢賢治作品は少し読んだくらいで、それで惹かれたこともないのですが、ここまで来ると、その人柄に魅力を感じるようになってきました。家族思いで、寛容、鷹揚で、堂々と、サバサバとした人柄みたいです。

生家は質屋で古着商で、経済的には裕福で恵まれています。家族は祖父母と両親、兄弟姉妹5人の9人家族で、賢さんは長男です。宮沢家は羨ましいほどにみな仲良しのようです。

やかまし屋の頑固オヤジが一人いますが、家族愛はくっきり見えます。世に認められることなく亡くなったからなのか、なぜか不幸な境遇の人だったというイメージがあったのですが、まるで違っていました。

「賢治と母と兄弟だけが家にいて、賢治が何か話し始めると、父のいないときはいつでもたちまち、おかしげな、ふざけたような話になってしまう。そのふざけかたが、これでもかというように、だんだん輪をかけてくる。そしておしまいには、みんな笑いがとまらず、はてはおなかの筋肉が硬くなって痛くなり、両手で押さえ目からは涙が出て、やめてやめてと口ぐちにいうのであった」p254

なお、賢治さんは1896年8月の生まれで、前年の3月に日露戦争は終わっています。戦争体験をしていません。平和な時代にいればこそ、創作活動に専念できるものですね。作品の量はハンパではありません。

彼は、家族や友人を大切にしており、創作に情熱を傾けて全力疾走された方のようです。社会的公平さを求めて行動的で、農民の味方で、そのための苦労をいとわず、常に弱者や苦しんでいる人々の側に立ちました。

立身出世は求めず、先進的で、理想を追い求めて、力の限りに働いた立派な人物でした。そんな日本人が存在したことだけで、もう私はハッピーな気分になっている。
 

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