そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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  山之口獏・作  『鮪に鰯』 


 鮪に鰯



 鮪の刺身を喰いたくなったと

 人間みたいな事を女房が言った

 言われてみると つい僕も 人間めいて

 鮪の刺身を夢見かけるのだが

 死んでもよければ 勝手に喰えと

 僕は腹立ちまぎれに言ったのだ

 女房はぷいっと 横に向いてしまったのだが

 亭主も女房もお互いに 鮪なのであって

 地球の上は みんな鮪なのだ

 鮪は原爆を憎み 水爆には また脅かされて

 腹立ちまぎれに 腹立ちまぎれに 腹立ちまぎれに

 現代を生きているのだ

 ある日 僕は食膳を覗いて

 ビキニの灰を被っていると 女房に言うと

 女房は 箸を逆さに 逆さに持ちかえると

 焦げた鰯のその頭を その頭を小突いて

 焦げた鰯のその頭を小突いて

 火鉢の灰だと呟いたのだ

 鮪の刺身を喰いたくなったと

 人間みたいなことを

 旦那も言い始めた

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