そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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山之口獏さんの詩が、気持ちよくて、心に沁みていきます。


・求婚の広告


1日もはやく私は結婚したいのです

結婚さへすれば

私は人一倍生きてゐたくなるでせう

かやうに私は面白い男であるとおもふのです

面白い男と面白く暮らしたくなって

私ををつとにしたくなって

せんちめんたるになってゐる女はそこらにゐませんか 

さっさと来て呉れませんか女よ

見えもしない風を見てゐるかのやうに

どの女があなたであるかは知らないが

あなたを

私は待ち侘びてゐるのです

 


・妹へおくる手紙
 

なんといふ妹なんだらう

――兄さんはきつと成功なさると信じてゐます。とか

――兄さんはいま東京のどこにゐるのでせう。とか

ひとづてによこしたその音信のなかに

妹の眼をかんじながら

僕もまた、六、七年振りに手紙を書かうとはするのです

この兄さんは

成功しようかどうしようか結婚でもしたいと思ふのです

そんなことは書けないのです

東京にゐて兄さんは犬のやうにものほしげな顔してゐます

そんなことも書かないのです

兄さんは、住所不定なのです

とはますます書けないのです

如実的な一切を書けなくなつて

とひつめられてゐるかのやうに身動きも出来なくなつてしまひ

満身の力をこめてやつとのおもひで書いたのです

ミナゲンキカ

と、書いたのです

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