そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
[1785] [1784] [1783] [1782] [1781] [1780] [1778] [1777] [1776] [1775] [1774]
河井酔茗作  (かわいすいめい1874-1965

ゆずり葉

子どもたちよ
これはゆずり葉の木です
このゆずり葉は
新しい葉ができると
入れかわって古い葉が落ちてしまうのです

こんなに厚い葉、
こんなに大きい葉でも
新しい葉ができると
むぞうさに落ちる
新しい葉に命をゆずって──

子どもたちよ
おまえたちは何をほしがらないでも
すべてのものがおまえたちにゆずられるのです
太陽のめぐるかぎり
ゆずられるものは絶えません

かがやける大都会も
そっくりおまえたちがゆずり受けるのです
読みきれないほどの書物も
みんなおまえたちの手に受け取るのです
幸福なる子どもたちよ

おまえたちの手はまだ小さいけれど──
世のおとうさん、おかあさんたちは
何一つ持ってゆかない
みんなおまえたちにゆずってゆくために
命あるもの、よいもの、美しいものを
いっしょうけんめいにつくっています

今 おまえたちは気がつかないけれど
ひとりでにいのちはのびる鳥のようにうたい
花のように笑っている間に気がついてきます
そしたら子どもたちよ
もう一度ゆずり葉の木の下に立って
ゆずり葉を見るときがくるでしょう


…………………………………………………
昔は、素直な気持ちでこの詩を読めたのに
今となっては
皮肉にさえ聞こえてしまいます

恥ずかしくなります
悲しくなります
遺していきたくないものばかりです

はじまりがあれば、終わりはある
命は永遠ではない
それさえ知らずにいたことを、
子どもたちに伝えるべきか

拍手[2回]

カレンダー
10 2017/11 12
S M T W T F S
1 2 3 4
5
13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30
プロフィール
HN:
竜頭 万里子 (りゅうとう まりこ)
性別:
女性
職業:
講師・カウンセラー・ライター
趣味:
読書・散歩
ブログ内検索
カウンター
バーコード
アクセス解析
【 ♥ イラスト提供:Night on the Planet ♥ 】