そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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ずっと以前から読んでみたいと思っていた高見順の『敗戦日記』、漸く読み終えたところです。読んでみたらビックリ!

私にとっては作家という人種は終日机に向かい執筆に勤しみ、創作の悩み多くそれに苦しみ、人づきあいをあまりしない! というイメージでした。

が、高見さんの日記によると、毎日のように誰かと会っておしゃべりしています。毎日どこかに出かけ、誰かと会う約束をしていたり、知り合いともよく遭遇して飲み屋に行って酒を飲みかわしています。高見宅に泊まっていく客人も普通によくあるみたいです。

それに、日記も毎日のように書き綴っていて、さらに仕事としての執筆もしているようです。なんというまめな人なのかと驚いてしまいます。書くことが苦ならないようです。

作家たちも互いに会って交友を深めているのにも驚きます。発表の場が無くなっていた作家たちの生計を助けるために、それぞれ私蔵している本を持ち寄って貸本屋を開いていますが、それ進めたのが高見順さんです。川端康成などとともに店番もしていたようで、意外に活動的な人たちだったんですね。

高見順さんをタイプ2w1と判定していますが、日記からは前向きで人なつっこい感じがします。なんとなく成長の方向に一歩を踏み出した人に見えて信頼がおけそうに見えます。

マスメディア批判をキチンとしています。物の考え方にも共感でき、視点もよくて、もっと早く読んでおくべきだったと思う。日記の一部だけを少し転載しています。


昭和20年2月17日
三壺堂の客の噂話を聞いていると、二十五日の猛爆で罹災者が十万人出たという。(はじめ一万人の間違いではないかと思った)日比谷から大塚行きの電車に乗った。神田橋へ出て驚いた。あたり一体、惨憺たる焼け野原でまだ煙のあがっているところもある。

焼跡で何かしている罹災民たちは、恐らくそれしかないのであろう、汚れた着物を着て、いずれも青い顔をしていた。だが、男も女も、老いも若きも、何かけなげに立ち働いている。打ちのめされた感じではない。そうした日本庶民の姿は、手を合わせたいほどのけなげさ、立派さだった。しかし私は大急ぎで逃げるように焼跡をはなれた。
家に帰ると新聞が来ている。東京の悲劇に関して沈黙を守っている新聞に対して、言いようのない憤りを覚えた。何のための新聞か、そして、その沈黙は、そのことに関してのみではない。防諜関係や何かで、発表できないのであろうことはわかるが、―国民を欺かなくてもよろしい。

3月8日
朝、警報。朝日新聞に「本土決戦に成算あり」という見出しの記事あり。「我に数倍の兵力、鉄量、敵上陸すれば撃砕 一挙に戦勢を転換せん」-比島()の時も同じようなことを新聞は書いたいた。しかるに実際は…。だから、こま記事も国民は果たして信用するだろうか。中略。一体、どうなるのかねと香西君は言った。誰も返事ができなかった。誰もわからない。何も知らされていないからだ。しかし、みんな不安で、新聞記事ではないが、大号令を待っている。けれど、それも出ない。だからなんとなく、一日一日を送っている。中略 茨城あたりの百姓は、敵が入ってくるのでは植えつけしてもしょうがないと迷っているという。デマがたんだん飛び出す。夜、読書。

3月19
国民学校初等科を除き学校の授業が全部停止となった。

7月22
日本が勝つために我々は永い間困苦に耐へてきた。これから先もどこまでも耐へていく決意をきめてゐる。それにつけても情けないのは日本の政治家が日本人らしくないことだ。食糧事情において兵器事情において誰一人として出来なかったことの責任に日本人らしく腹を切った政治家がゐないではないか。国民を信用しないで、いいのだろうか。あの、焼け跡で涙ひつつ見せず雄々しくけなげに立ち働いている国民を。

8月19日 (注・終戦記念日とされたのは8月15)
新聞は、今までの新聞の態度に対して、国民にいささかも謝罪するところがない。詫びる一片の記事も掲げない。手の裏を返すような記事をのせながら、態度は依然として訓戒的である。等しく布告的である。政府の御用をつとめている。敗戦について新聞は責任なしとしているのだろうか。度し難き厚顔無恥


 


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