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そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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昨年暮れのことです。突然に仕事中の息子から電話が入りました。「取引先の社長が、母さんのこと知っているみたいなんで、今ここにいるから、ちょっと電話替わるね!」といつもの調子で言う。

その社長は開口一番、「“りゅうとう”という名前から、以前にバイトしていた女性を思い出して、確認しようと思ってね。めったに無い名前だから、たぶんと思った」

お話を聞いて確かに30代の頃にバイトした会社の社長さんだと確認できました。タイプ8w7の男性です。たぶん年齢は65~75歳くらいになっていると考えられます。次に、「ワシに食ってかかったことがあるよね」と言う。


 「いえいえそんな…」と続けようとしても、すばやく「気性が強いところがあったよね」と言われる。まあ気性が強いところはあるかもしれないが、この社長には何一つ口出しする気が起きませんでした。他の人の言うことは全く聞き入れない独裁者タイプの社長です。

「あのう…それは違う人では」と言ったにもかかわらず、それは受け入れず、早くもあの頃と同じようにしゃべりだします。決して忘れるような男性ではありません。組長のボスというイメージの男性で、存在感に圧倒されてしまいます。奈良の大仏みたいな顔立ちで、しかもかなりの福耳です。

懐かしくて「あのう…」としゃべろうとするのに、やはり聞く耳を持たない。ちぃっとも変わってない。実在のタイプ8を目の前にしたら、並の人間ではないとすぐに気づくのではないかと思います。

タレントの石原良純さんが、銀座で小沢一郎(8w7)さんが数人の男性を従えて歩いていたのを見て、そのド迫力に驚き「怖かった!」とテレビ出演の折言っておりました。が、テレビ画面を見たくらいではタイプ8の存在感は分かりません。

あの頃、同じ時期にバイトとして入った女性ふたりが、この社長と丁々発止と議論していたことを思い出しました。このような社長と議論できるなんて凄い女性だと思ったことも、ついでに思い出しました。よくよく考えるとたぶんタイプ2w1の女性です。また、女性社員はみなきつそうでした。また濃い化粧で派手な服装をしていました。


当初、接客の仕事を教えられましたが、うまくやれずにいました。ある日、「口紅をしたほうがいい」と社長から指導されました。「あの…口紅持ってないので…」と言うと、その場にいた女性に「あんたの口紅をこの子に使わせてやって」と命じる。服装も地味だったので明るいスーツを着ろと言われました。仕方なくスーツを自前で買いました。

この職場の女性たちは、みな、この社長好みになっていたのでした。男性社員は数人で通常はほとんど見かけない。そして、毎夜のごとく祝祭日のように歌って踊って飲んで騒ぐ…。まるでハーレムの祝宴みたいでしたが、それに参加を強いられる。土日も出勤しろと電話が入る。

でも仕事をするのではなく説教される。教育される。しかも、休日出勤手当は出ない。お金に関することではシビアでした。「イスに座る時は膝をくっつけること!背筋は伸ばせ!」と姿勢も正される。常時、無駄口はご法度で、私語を話すと、それは社長に筒抜けになります。スパイ担当者が居るのです。

真夏で、社長はシャワーしたばかりらしく、腰にバスタオルを巻いているだけ。その恰好でずっと仕事とは関係ない話が続く…。と、気になっていたがついにタオルが足元に落ちた。「キャーっ」と女性の声があがりましたが、「これくらいで大声をあげるな!」と社長。汗もかくな、と言われたこともあります。とにかく驚くことばかり。

たしか新雑誌の発行のためのスタッフ募集だったはず。面接会場に行くと100人くらいの女性がいた。演壇に立ち、社長が直々に質問する。凝視される。ひとり一人に順に質問を変えて尋ねるが、その回答に不満があると、「君は採用しない」と告げられ、その場で退場させられる。

ドンドン退場して行く。とうとう10人くらいになった。会場は静まり張りつめた空気が漂う…。なんという面接なのだろう。あれほど緊張したことは、その前もその後も無い。

社長は緊張感がない人間を嫌っていたようだ。で、自分のことを「オレは満身傷痍だ」とよく言っておりました。なぜだか理由も言わないので、その意味は理解できないままです。

睡眠時間も短時間だと聞いたことがあります。タイプ7が警鐘係かつ斥候役をするため不眠症的な傾向があるとしたら、タイプ8のボスはもっと眠らないのだろう。

その10年後にエニアグラムと出会い、世界と否定的に結びつくタイプ(837)という理論を見つけ出しましたが、このタイプ8の男性と出会っていたことが役立ったと思う。

でも、家庭を持ち子育てしながら働ける職場ではなかったので、2か月余で辞めました…。このような男性が世の中にいたんだと、つくづくと思う。

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竜頭 万里子 (りゅうとう まりこ)
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