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そこに、いつごろ創建されたのかわからない古い塔が、一面に生い茂った葦原に囲まれて立ち尽くしている。風が吹くと葦原がざわざわに唸りだす。なぜか、懐かしさに一杯になる、あの塔…。ずっと探し続けている。塔の秘密を解き明かすのは誰? 
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今日は、高村幸太郎の詩をご紹介したいと思います。あまり知られていない詩です。なお、幸太郎さんのエニアタイプは、タイプ2w1と判定しています。

  ところで、恥ずかしながら、幸太郎さんの詩を読んでいるうちに、私自身の母のことを思い出してしまいました。誰にとってもそうだとおもうのですが、母親という存在は不思議ですね。自分も母親なのに、どうしてだか心が大きく揺らぎます

さて、推敲もせずに下手な詩作に着手したというわけですが、もう少し経ってから推敲しようと思っています。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥

母をおもふ  高村光太郎


夜中に目をさましてかじりついた
あのむつとするふところの中のお乳。

「阿父(おとう)さんと阿母(おかあ)さんとどつちが好き」と
夕暮の背中の上でよくきかれたあの路次口。

鑿(のみ)で怪我をしたおれのうしろから
切火(きりび)をうつて学校へ出してくれたあの朝。

酔ひしれて帰つて来たアトリエに
金釘流(かなくぎりう)のあの手紙が待つてゐた巴里の一夜。

立身出世しないおれをいつまでも信じきり、
自分の一生の望もすてたあの凹(くぼ)んだ眼。

やつとおれのうちの上り段をあがり、
おれの太い腕に抱かれたがつたあの小さなからだ。

さうして今死なうという時の
あの思ひがけない権威ある変貌。

母を思ひ出すとおれは愚にかへり、
人生の底がぬけて

怖いものがなくなる
どんな事があらうともみんな

死んだ母が知つてるやうな気がする。



‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
母をおもう           りゅうとうまりこ        


亡くなった母のことを思い出すと
今でも少し涙ぐむ
あれから35年も経っている
年月を経るほどに、母に会いたいという気持ちが強くなる
母の声を思い出そうとする


母が亡くなった日から三日三晩を泣き続けた
人前では、とりすました顔ができたのに
大つぶの涙がずっと流れ続けた
あれほどの涙は
以来、一度も流したことがない


虫垂炎の手術を受けようというとき、母は何も言わず私の顔を覗き込んだ
それだけで、見守ってくれているのだなとわかる
局部麻酔で手術中のことだ
おかあさんっ! と、つい私は口走ったらしい
医者から、からかわれて恥ずかしかったことを覚えている


高校生くらいまで、母が居なかったら自分は生きて行けないと思っていた
母は自分を必ず守ってくれる
絶対に自分の味方になってくれる
と、なぜだかわからないが、根拠もなく
絶対的に信頼していた

家事の手伝いを忘れたり
いい加減に済ますと叱られた

それ以外はほとんど放任されて育ったようなものだ
宿題は? とか、その他、学校に関することでは何も問われなかった
成績がよいとは言えないが、それで叱られたことは一度もない

学校に遅刻ばかりしていたことも、忘れ物が多かったことも、
たぶん、母は知らず
たとえ知ったとしても、叱られなかっただろうと思う
たぶん、そうだと思う 
カバンを忘れて登校したり下校したりと、粗忽なところは今も変わらない

弁当を忘れた時は教室までこっそりと届けてくれた
授業中なのに担任にも断らず
たぶん、こっそり隠れて届けてくれたのだろうう
れしそうな表情をしていた 
バカな子だねって感じで 

母は、ほとんど躾らしいことをしなかった
そのせいか、私は礼儀も挨拶の仕方も知らないままである
うちの娘はなんにも知らなくて‥ 
などと、誰かに言っていたような
そのくせ、なにかを躾けようともしなかった

私は、ほとんど母の言いなりで
ぶつかったことも、反抗したこともない
それで、自分はマザコンなのかなと‥
でも、そうではなかったようだ
反抗する理由もなく、反感をもったこともない


風呂に入っていると、母がそっと入ってくることがあった
湯船にもたれて、ふたりして並らぶと
足を指さして、「そっくりだね」
母はいつも同じことを言う
そうして、母の背中を流す羽目になる

末っ子だったせいなのか、何か求められたり期待されたこともなく気楽だった
母とは同じタイプで、ウイングも同じ
趣味も嗜好も似ていた、好きなカラーも似ていた
好みの男のタイプも似ていたかもしれない
ほとんどのことで違和感がなかった‥

休日、珍しく母とふたりきりになると
会話もなく、あれ取って、とか‥それくらい‥
でも、なんだか穏やかな空気に包まれていた
たぶん、いい関係の母と娘だったんだ
今さら気づいても、どうなるものでもないが

辛い母娘関係があると知るほどに、
運がよかったと、自分は恵まれていたんだと気づく
それで、よけい母が恋しくなってくる
一度くらい、母に感謝しておけばよかった

一度くらい、気づいていればと思うにの
一度くらい、と‥



 


 

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